2019年5月に書かれた産経新聞の記事によれば、国内のスポーツクライミングの人気が急上昇しているという。愛好者を含む競技人口は推定60万人にも上るとか。その背景にはここ10年間でジムの数がおよそ5倍に増えたことと、2016年に東京オリンピック2020の追加種目になったこと、さらには国内外で開かれた大会で、日本人選手が目覚ましい活躍を遂げていることが後押ししているようだ。
そもそもスポーツクライミングとは垂直の壁を登る競技のことで、そのなかでも登る速さを競う「スピード」と、高さ4mの壁を時間内にいくつ登れるかを競う「ボルダリング」、15mの壁をどこまで登れるかを競う「リード」に分けられている。さらに、競技とは別に、道具を使わず自身の体力と技術を駆使して岩を登ることをフリークライミングという。フリークライミングもリード、トップロープ、ボルダリングの3つに分けられ、なかでもチョークとシューズという必要最低限の装備で登る最もシンプルなスタイルの「ボルダリング」は、クライミングをはじめる人たちの入口となっているようだ。
IFSC国際ルートセッターが手がけるボルダリングジムでクライミング初挑戦

国内有数のルートセッターのひとり。
山形市北町にある「FLAT bouldering」は、ちょうど国内でスポーツクライミングの人気が盛り上がった時期と重なる2015年にオープン。
オーナーの平松幸祐さんは、現在日本に5人しかいないIFSC(国際スポーツクライミング連盟)公認のルートセッターのひとりで、2020年5月に開かれたボルダリングジャパンカップではチーフセッターを務めるなど、スポーツクライミング界では一目置かれる存在だ。
そんな平松さんがつくったボルダリングコースを体験したいと、全国のクライマーたちが遠征に訪れることも多いという。そんな国内有数のジムが今回の取材現場だ。

チャレンジャーの富樫卓さん。
ボルダリングは初挑戦という富樫卓さん(山形トヨタ 総合物流BPセンター勤務)とともに、オトナが真剣に遊ぶ〝つくりば〟を体験リポートする。
指、腕、足、背中、全身を使ってホールドをつかめ
「FLAT bouldering」でボルダリングをはじめて体験するという場合は、インストラクターによる1時間程度のレクチャーを受けることができる。準備運動で丁寧に体をほぐしながらボルダリングの基本ルールを習い、壁面の前へ。
先にインストラクターによる登りかたのデモンストレーションを見学し、イメージを掴んだらいざチャレンジとなる。
「壁にレイアウトされているホールドを掴みながら進みます。登るコースは自由に決められますが、グレードが上がるごとにホールドが小さくなったりホールドとホールドの間隔が大きくなったり、身体能力が試されることになります」と平松さん。
ビギナーの富樫さんだが、学生時代は野球、社会人になってからは趣味でゴルフを続けているというスポーツマンだけあって、10級、9級を難なくクリア。次の8級では、対峙する壁の傾斜や絶妙な曲面への対応力が求められる様子で、コース中盤で一度固まってしまう。先に平松さんがデモンストレーションで登った時は終始滑らかに進んだので、地上で見ている素人目にはその難しさが伝わらなかったが「傾斜のある壁面では手の力だけでホールドに食らいつくのが難しい」と富樫さん。さらにホールドを掴んだままだと次のアクションを出しづらい体勢であったり距離感であったりと、登った本人にしかわからない課題が見えたようだった。
自分と向き合う充実感と達成感。ライフスタイルごと変えてしまう魅力がある。
「初回であれば7級をクリアできたら及第点でしょうか。ボルダリングは自分と向き合いながら上を目指すスポーツ。同じコースでも登る人が違えば多様性が生まれるように、ゴールの目指しかたも人それぞれでいい。描いたコース通りに進めるか、掴んだホールドが自分にのスタイルに合っているかそうでなかいか、ひとつ登るごとに問題を解いていくパズル的な感覚に似ているかもしれません」と平松さん。

8級チャレンジでボルダリングの難しさと楽しさの入口を経験した富樫さんだが、手順を解き直して2回目は見事クリア。いざ7級へ。すると序盤はなんとか切り抜けたものの、終盤あと一歩のところで目指すホールドへの手が届かず落下。休憩を挟みながら何度か挑戦するも、残念ながら同じ箇所でのつまづきを克服するには至らず。
「7級は序盤から一手一手がハードになりました。中盤までなんとか切り抜けても終盤で腕が震えてしまい、ホールドを保てなくなるという印象です。腕の力だけとか足の力だけでなく、全身を使って動く必要を感じました。今回7級のゴールを獲れなかったのがすごく悔しいので、次はトレーニングして臨みたいです」と富樫さん。

頭のなかでルートを考えながら、背筋や腹筋も含めた全身の筋肉を駆使して四肢を伸ばす。柔軟性やバネを生かした動きが求められるし、何より壁と向き合った時の判断力、集中力が試される。ボルダリングは想像以上にクリエイティブなスポーツのようだ。
「クライミングは誰かと比べてやるものではなく、自分と向き合いながら自分のペースで取り組めるスポーツです。レベルに合った目標が生まれ、それに応じた達成感が得られるのもひとつの魅力では」
「目標が定まりやすいので、そのための体づくりをしたりだとか、食事に気をつけたりだとか、生活スタイルにも影響するようになる人は多いですね。かといって最初に必要な道具はシューズとチョークくらいで、初心者でしたら気軽にレンタルから始めてもいいでしょうし、自分のペースで取り組めるのでライフスタイルのなかに取り入れやすいと思います」と平松さん。
「FLAT bouldering」の利用料はフリータイムで一般1980円、18時からクローズまで1300円。別途初回登録料1100円が必要だが、はじめての利用者はシューズ&チョークバッグが無料で利用できる。
まずは動きやすい服装で気軽にトライ。目指すホールドをつかもう。

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