PLAY REPORT

実際に行われた趣味・遊びのレポートをお伝えいたします。

2021年01月31日

#004「庄司屋」そば打ち体験

「庄司屋」そば処山形屈指の老舗・庄司屋の五代目に習うそばの学校。師走の最後を締めくくる伝統の国民食「日本そば」を自ら手打ちで。

 

そば好きなら一度は体験したい日本伝統の技

 山形県内は、各地に名店が連なる街道が存在するほか、そばを通した多彩な食文化が根強く残るなど、国内外のそば好きから一目置かれるそば処である。近年はさらに産地としての評価も高まり、古来より作られてきた在来種に加え、雪国という地域の特性を生かして産まれた山形生まれ山形育ちのそば、原料にも注目されているのが特長だ。
 山形県人にとっては身近な存在であるそばだが、その流儀や美学について、また通や粋と称するなどこだわり派が多いことでも知られる食べ物だ。それだけ日本人にとっては伝統のある食であり文化であり、こだわりたくなるほどに美味しい存在ということなのだろう。それならばいざ自分たちでそばを打ち、食べるカタチに仕上げてみよう、というのが今回の企画だ。

 

庄司屋五代目の庄司信彦さん(右)

 

150年受け継がれてきたその技に圧倒

講師は庄司屋の五代目、庄司信彦さん。
 集まったのは、山形市滑川にある鈴木製粉所敷地内の「蕎麦碾處・石臼館」。ここでは、石臼で製粉する工程の見学や粉ひき体験ができるほか、そばの手打ち体験ができる研修室が完備されているので、そば店主催の手打ちそば体験や勉強会、講習会などの会場としても利用されている。
 今回集まったつくりばプロジェクトメンバーは6人。山形県内屈指の老舗、庄司屋の庄司信彦社長を講師に迎え、まずはそば打ちの基本の流れと、注意点を聞く。全員がそば打ちは初めて体験するということで、心なしか緊張の面持ちでのスタートとなった。
「庄司屋では蕎麦粉10割に対しつなぎ1の十一(といち)のそばを提供していますが、今回皆さんに打っていただくのは、二八(にはち)そばです。そばは、打つ工程において乾燥させないことがとても大切で、そのためには手際よく進める必要があります。必要以上に熱が入り乾燥が進んでしまうと風味が損なわれ食感も悪くなります。ですので、今日そば打ちしていただくのは、当店で提供しているものよりつなぎは多めですが、その分初めてのかたでもまとまりやすく、喉ごしの良くそばですので、どなたにも食べやすい手打ちそばができると思います」と庄司社長。
 まずは、庄司屋の職人さんによる基本の手順をひと通り見学することに。

 

そば粉と水、それだけ。

材料はプロも素人もまったく同じ。

水回し

「木鉢に粉を入れたら、用意した水の半量を回して入れてください。そして粉に水分を行き渡らせるよう、指を立ててかき混ぜます」

 職人さんが慣れた手つきでそば粉を混ぜていく。まだまだ粉と水の状態、交わってはいない。
「粉がダマになったら適度にほぐしながら、あまり神経質にならずに残りの水のまた半量を入れて、両手の指を使って馴染ませてください。この時、手には力を入れ過ぎず、軽やかに動かすのがコツです」
 庄司社長が丁寧に説明をしてくれる間も、職人さんの手を止めない。まとわりつく粉を払う所作さえ規則正しく、粉と水を素早くかつ丁寧にまとめていく。

練り

「最後の水も入れましょう。だんだんと小さいまとまりから大きいまとまりへ、かたまりが大きくなると思います。ひとつにまとまってきたら生地が滑らかになるよう、腰を入れてぐっと練ります。このとき、空気を出すイメージで」

 会場に集まったメンバーは、庄司社長の声に耳をそばだてながらも、視線は無駄のなく淀みのない職人さんの動きに一点集中。
 ここまでの段階でおよそ5分。さらにここから5分ほど、そば粉と水のみの材料が、こね鉢のなかで艶を感じるほどに練り込まれていく。

 


 

 

 

 


のし

「つぎは、のしの作業に移ります。綿棒を使って打ち粉を降りながら伸ばします。最初は円状に広げるように、その後、四角を意識して角を作っていきます。気をつけたい点は生地の厚みをなるべく均等に伸ばすこととです」そう説明すると、庄司社長が自ら麺台に立った。ここからは、仕上がりを左右するのしの工程だ。のしの際のコツを解説しながら、庄司社長はさすがに慣れた手つきで丸まったそばを伸ばしていく。中心から外へ、少しずつだが素早く、あっという間に生地は広がり四角い角が作られていった。四角くなった生地をまるで風呂敷のようにしなやかに折ると、いよいよ切りの作業へ。

切り

 生地をこま板で押さえながら、麺切り包丁をその重さを利用しながらストンと下ろす。切りは、そばの喉越しを決める重要な作業。粋な角のあるそばを作るためには、均一な切り幅、スパッと角のある切口が求められる。
「そばは太くても細くても大丈夫です。お好みで切ってください。ただ、お集まりの皆さんのなかで、普段から包丁を握っている、料理が得意というかたはいますか?」との庄司社長。突然の問いに、メンバーの2人ほどが手を挙げる。さすが令和の現代、男子厨房でも活躍するとは頼もしいなと感じた瞬間「ではそのお2人はとくにお気をつけて。麺切り包丁は家庭の包丁とはまったく違います。普段から料理包丁を握る人ほど、ケガをしないよう慎重に扱ってください」と注意が飛んだ。

 

見るのとやるのとでは大違い、そば打ちの奥深さを知る回に。

 

 庄司社長による圧倒的な切りの作業を見終えたつくりば一行。いよいよ自分たちのそば打ち体験スタートだ。粉と水、たったそれだけの原料から、山形県人にとっては普段から近しい食である日本そばが出来上がる。工程も文字で書く分には水回し、練り、のし、切りと大きく分けて4行程とシンプルだ。それだけに、ちょっとした加減や配分量、のし方、切り方に個人差が出るとも言える。

メンバーの「練り」作業


「これ、ちゃんとくっつくか心配」
「ダマになっちゃった」
 メンバーはほとんど無言でそばと向き合っているものの、真剣がゆえに不安な気持ちが時折つい溢れ出る。
「大丈夫です。自分で打ったそばはどんな状態でもおいしいですから」手元がおぼつかないメンバーには助け舟を出しながら、庄司社長が励ましていく。職人さんの作業の倍ほどの時間をかけて生地を丸めると、できた人から次行程ののし、さらには切りの作業へと進む。

メンバーの「のし」作業

「均等に伸ばすのが案外難しい」
「あ、ここ切れそう」
「これ、性格出るよね」
 それぞれが愛しむように生地をのしていく。綿棒を持ってそばと向き合う姿勢が、それぞれ様になって見えてくるから不思議だ。

メンバーの「切り」作業

 切りの行程では、迷いなく軽やかに麺きり包丁を下ろする人、トン、トン、と1回ずつ慎重に進める人、麺の幅もそれぞれに細かったり太かったり個性が現れた。打ち終わったメンバーに声をかけると、
「いやぁ、想像していた以上に重労働でした。そばを食べるという行為は我々にとって気軽な日常だと思っていましたが、その背景には職人さんたちの努力があることを痛感しました」と感想が寄せられた。
「でも今回せっかく体験できたので、またぜひ挑戦して家族に振舞いたい」
「お父さんの打ったそばを食べよう会か。いいね、かっこいい」とも。


 庄司社長曰く「そばは毎日打っても毎日違います。極めれば極めるほど追求できてしまうというか、自分が本当に納得のいく仕上がりのそばに出合えるのは、我々でも難しいです」と。続けて「ただ、皆さんが今日自分で打ったそばは、我々本職の打ったそばと比べてどうこうではなく、手放しでおいしいはず。そこには皆さんの頑張りと愛情、気持ちが入っているので」と、つくりばメンバーのチャレンジを讃える言葉を贈ってくれた。
 最後に、庄司屋150年の打ち立てのそばを全員で満喫して終了。風味豊かなそばの香りが、いつも以上に胃袋を喜ばせる会となった。

 




 

  • 店舗データ
    そば処庄司屋
    [山形本店]山形県山形市幸町14-28
    定休日:月曜日(祝日の場合は翌平日)
    営業時間:11:00〜16:00(LO15:30)/17:00〜20:30(LO20:00)
    駐車場:30台


[御殿堰七日町店]山形市七日町二丁目7-6
定休日:不定休(WEBサイト、店頭にて告知)
営業時間:11:00~21:00(LO 20:30)

 

ホームページ→https://www.shojiya.jp/

 

◎そば打ち体験
会場/鈴木製粉所石臼館にて

 

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