PLAY REPORT

実際に行われた趣味・遊びのレポートをお伝えいたします。

2023年01月11日

#013「天体写真」を撮ってみた!

 

「社屋の屋上で天体写真を撮ってみた」

 

星の瞬きをとらえるロマン
一眼レフカメラと画像処理ソフトで山形の夜空を最高の1枚に

 

天体写真撮影って…
ハードルが高い?

 いつからかそこにあり、人間の暮らしと密接に関わりながら季節によって見え方の変わる空の星たち。地球に住む人間たちから見える月や星たちは、ギリシャ神話や昔話「竹取物語」となって世界中で永く語り継がれてきた。そんな、手に取ることのできない存在は憧れの対象であり、流星群や日食、月食が近づくニュースに窓の外を見てしまうのはDNAの仕業なのだろうか。
 今回、天体観測が長年の趣味だという山形トヨタの代表・鈴木吉徳が、山形市南一番町にある山形トヨタ社屋の屋上から天体写真の撮影にチャレンジした。

 「天体写真撮影」というと、大きな望遠鏡など高価な機材が必要なうえ、知識・経験も必要でハードルが高いイメージがあるのではないだろうか。夜空の美しさに手元の携帯電話で撮影してみたものの、ぼやけた暗い画像で何がなんだかわからないものになってしまった経験のある人もいるかもしれない。
 しかし、現在では一般的に販売されているデジタル一眼レフカメラ、ミラーレス一眼レフカメラの普及と画像処理ソフトの進歩により、手軽に撮影できるようになってきている。

 今回の天体撮影に使うのは、一眼レフカメラ、レンズ(広角・望遠)、フィルター、三脚・雲台、リモコンレリーズ、ポータブル赤道儀。なかには聞きなれないアイテムがあるが、リモコンレリーズはカメラにつないで離れたところから自動でシャッタ―を切るためのもの。ポータブル赤道儀は「星雲」などを望遠レンズで撮影する際移動する「星」を追いかけて「点」に写すために必要な天体撮影の重要アイテムだ。

 さらに天体撮影に必要なソフトは2種類。ひとつは天体の位置を知るための星図ソフトで、街中から肉眼では見えない「天の川」の位置や「星雲」の方向や位置を確認するために使う。様々なソフトがiPhone、Androidで出ているなかで、今回はiPhone用の「StarsPhoto-星を撮ろう」というソフトを使用した。
 そして、ふたつめは撮影した天体写真用の画像処理ソフト。同じ構図で撮った写真を重ね合わてノイズを低減し星を浮かび上がらせるソフトウェアで、動かない地上風景と移動する星を自動認識したうえで賢く重ね合わせを行ってくれる機能もある。今回はMac用「StaryLandscapeStacker」を使用したが、Winsows用にも「Sequator」という同様のソフトがあるのでOSに合わせて。
 また写真の明るさなどの調整用にフォトレタッチソフトも使用して最高の1枚に仕上げていく。

 

屋上から見上げる空の下へ
撮影準備をしよう

 今回の「天の川」は、三脚のみ使用してカメラを固定し広角レンズを使って撮影。
 「北アメリカ星雲」は、ポータブル赤道儀を使い星の動きに合わせてカメラを動かしながら望遠レンズを使って撮影していく。
 「天の川」は夏の夜に南から北に流れる川のように見える星の密集地帯。山の中など暗いところに行けば肉眼でも見られるものの、街中で見ることはできない。
 撮影日の2022年8月末の20時、星図ソフトを使って方向と位置の確認をすると「天の川」はちょうど真南から北に向けてかかっているよう。山形トヨタの本社は南側には窓がないため、屋上から狙うこととした。

StarsPhotoでの「天の川」の位置確認

 また「北アメリカ星雲」は「はくちょう座」の一等星「デネブ」(夏の大三角形のひとつ)の近くにあり、この時期はほぼ真上にあるので屋上からの撮影で問題なし。まずはカメラの視野に「デネブ」を導入し、星図ソフトを利用してそのデネブの位置をずらして構図を調整した。

「北アメリカ星雲」の構図確認

 

星の動きにあわせた撮影方法で
目に見える以上の景色を残す

 「撮影方法」は、一眼レフカメラをマニュアルモードに設定したうえで「絞り」を一番小さいF値に設定し、撮影する場所の明るさに応じて設定することができる「ISO感度(撮像素子の感度)」は1600~6400に設定する。
 「ピント」は星にオートフォーカスは効かないので、マニュアルフォーカスで明るい星を拡大し、星像が一番小さくなるように合わせたら、「画像の保存形式」は情報量が最も多いRAWを選択する。
 最後に「シャッタースピード」は、暗い星を写すためにはできるだけ長くシャッターを開けていたいが、そうすると星は動いているため星の形が「点」ではなく「線」になってしまう。そのため星を追いかけて「点」として撮影してくれる「赤道儀」を使用する。
 なお星が点像に写る上限の時間はレンズの焦点距離により概ね次の通り。

 

レンズ焦点距離14mm24mm35mm100mm

35mmフルサイズ

~35秒~20秒~14秒~5秒

APS-Cサイズ

~20秒~14秒~9秒~3秒

 

 焦点距離100mmともなると5秒以下の短い時間しか許容されず、これでは満足に写らないので、露出時間を稼ぐためには、星を追いかける「赤道儀」が必要になるというわけだ。

赤道儀未使用
赤道儀使用

 

 撮影はまず1枚試し撮りをして、撮影画像のヒストグラムが真ん中近くにくるようにシャッタースピードを調整した。

ヒストグラム画

 

 調整ができたらいよいよ「撮影本番」だ。
 手振れを防ぐために、離れたところからカメラシャッターが切ることのできるリモコンレリーズをカメラに接続し、露出時間(シャッタースピード)、インターバル時間(撮影間隔)、撮影枚数をセットしスタート。
 今回の場合、「天の川」は15mm広角レンズを使用してISO13200、露出時間15秒で30枚を撮影。「北アメリカ星雲」は100mm望遠レンズでISO1600、露出時間30秒で50枚を撮影した。

撮影スタンバイ状況

 

画像処理ソフトで小さな星もとりだす

 撮影が終わったら撮った画像をパソコンに移動し、画像処理をして写真を仕上げていく。同じ構図で撮った数枚の写真を重ね合わせてひとつの画像とし、その後、星の強調処理を行った。写真を重ね合わせることでノイズ低減ができるので、ノイズに埋もれがちな淡い星を強調処理で浮かび上がらせることができる。
 「StaryLandscapeStacker」を使って画像を重ね合わせ、Mac純正の写真アプリで調整を行った画像が以下のもの。

簡易処理 天の川
簡易処理 北アメリカ星雲

 

 「明るさ」「ホワイトバランス」「コントラスト」「トーンカーブ」の調整だけで、このように天体の存在が浮かび上がってくる。さらに天体画像処理専用のソフトまたはPhotoShopなどのフォトレタッチソフトで「光害カブリの除去」などの高度な画像処理を行うと、冒頭に示したような写真に仕上げることが可能だ。この撮影に使用した赤道儀の使い方や画像処理については、Youtubeなどにも多くの事例があるので、ぜひ参考にしてみてほしい。

 

これらの画像処理を経て完成したのがこの2枚。

天の川 MilkeyWay

「天の川」は三脚にカメラを固定して撮影した「固定撮影」

 

北アメリカ星雲 NGC7000

「北アメリカ星雲」はポータブル赤道儀を用いて星の動きをカメラで追った「追尾撮影」

 

鈴木社長「どうでしょうか。結構ちゃんと写っているんじゃないでしょうか。」

 街灯りのある場所から、肉眼ではまったく見ることができない星が写せるのはとても感動するもの。「天の川」を写す固定撮影なら、手持ちの機材+人口光を軽減するための「光害カットフィルター」 (5,000円前後で購入可)と、今回抽選の商品「リモートレリーズ」があれば十分チャレンジ可能。
 一眼レフカメラが活用されずに眠っている方はぜひとも挑戦して欲しい。

 

[使用機材リスト]
カメラ:CANONミラーレス一眼レフカメラEOS M6
レンズ(天の川用):CANON EF-M 15-45mm F3.5-6.4
レンズ(北アメリカ星雲用):OM Zuiko 100m F2.8(中古品)、マウントアダプタKF-OMEM
フィルター(天の川用)、Kenkoスタリーナイトフィルター(49mm)とプロソフトンA(49mm)2枚使用
フィルター(北アメリカ星雲用)、Astronomik CLS-CCDフィルターEF-M用
リモートレリーズ
三脚:Velbon
雲台:Z型雲台: Move Shoot Move Z Mount
ポータブル赤道儀: Move Shoot Move BssicKit(Rotator+Pointer)(海外HPより直接購入)

 

[機材選びのポイント]
【カメラ】

ミラーレス一眼レフカメラなど、マニュアルで「シャッタースピード」「絞り」「ISO感度」が設定できるものが必要。
【レンズ】

「天の川」のような広い範囲を写す場合は焦点距離が短い(35mm以下)の広角レンズ。「星雲」のように拡大が必要な場合には望遠レンズ(100mm前後)が必要。ズームレンズでもOKですがなるべくF値が小さい明るいレンズが望ましい。一方オートフォーカス、手振れ補正などの機能は不必要なので、中古のマニュアルフォーカスレンズなどもマウント変換アダプターを介して活用できる。
【フィルター】

街中で撮影する場合には、人口光を軽減するための「光害カットフィルター」があるとキレイに写せ、街中で撮るなら必須アイテム。一枚めとしておすすめなのは、ケンコーのスタリーナイトフィルター(5千円前後)。
【三脚・雲台】

カメラを固定するために必要だがビデオ三脚でもOK
【リモコンレリーズ】

今回の撮影では、シャッターを15秒~30秒程度開けっぱなしで撮影し、それを連続的に30枚~50枚撮影した。リモコンレリーズはこれらの工程を自動的に行ってくれるもの。※今回の抽選のプレゼント商品です。
【ポータブル赤道儀】

「星雲」などを望遠レンズで撮影する際移動する「星」を追いかけて「点」に写すために使う必須アイテム。北極星に向けて設置する必要があるので、ちょっと知識が必要。今回は海外製の機種を使ったが、国内製品ではビクセンのポラリエ、ケンコーのスカイメモSなどが3万円台で購入可能。

 

 

 


 


<プロフィール>

山形トヨタ自動車株式会社

代表取締役 鈴木吉徳

山形県山形市出身 

一橋大学商学部卒業。商工組合中央金庫入社後、慶応大大学院で経営学修士(MBA)を取得。 1992年に山形トヨタ自動車の非常勤取締役となり、95年4月に取締役経理部長、同年6月から現職。 趣味はゴルフ、スキー、天体観測

 


 

 

 

pagetop